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メディカル整体アカデミー

2024.10.30 身体の仕組み

ゼロからはじめる筋膜の構造理解

はじめに

こんにちは!

 

メディカル整体アカデミー沖野です。

 

今回は.....

 

筋膜について解説していきます!

       

筋膜は日本語で「筋膜」と訳されていますが、もともとは英語で「Fascia(ファシア)」と呼ばれています。

 

Fasciaには「膜組織」という広い意味があり、日本語には完全に対応する言葉が存在しないため、日本では特に「筋膜」という訳語が使われるようになりました。

 

このため、筋膜といっても実際は筋肉だけでなく、皮膚や骨、血管を包むさまざまな膜組織も含んでいるのです!

筋膜は注目されている

筋膜は、筋肉や骨、内臓を包み、全身をつなぎ支える役割を持つ組織です。

まるでボディースーツのように私たちの体全体を覆い、姿勢や動きの調整に関与しています。

 

近年、この筋膜が痛みや不調に影響を与える重要な組織として注目されています。

特に、筋膜が硬くなったり滑りが悪くなると、筋肉や関節の動きが制限され、慢性的な痛みが生じやすくなることがわかっています。

 

本記事では、この筋膜の基本的な構造や役割について解剖学と生理学の視点から解説していきます。

筋膜について理解を深めることで、体のメンテナンスやセルフケアにも役立つ知識が得られるはずです。

筋膜の解剖学的構造

筋膜は体のあらゆる部分を包み込む「ボディースーツ」のような存在です。皮膚のすぐ下にある浅筋膜と、筋肉や骨、血管などを覆う深筋膜の2種類に分けられます。

 

浅筋膜は、主に皮膚の下に広がり、体温調節やリンパの流れなど、体内の恒常性維持をサポートしています。一方、深筋膜は筋肉を包み込み、筋肉同士や骨と筋肉をつなぐ役割を果たし、体の動きをスムーズにするために重要です。

そのため、浅筋膜に異常が生じると、冷えや過剰な発汗、免疫機能の低下などが引き起こされやすくなります。

   

このように、筋膜は全身を一体化させる構造を持ち、体の動きや姿勢をサポートする重要な役割を担っているのです。

一方で、筋肉を直接覆うのが深筋膜です。これは、筋肉の動きをサポートし、筋肉同士の摩擦を減らす役割を担っています。深筋膜が硬くなったり、滑りが悪くなったりすると、筋肉の動きが制限され、痛みや不調の原因になることが多いため、治療や評価の対象として注目されるのは主にこの深筋膜です。

筋膜の治療というと、浅筋膜よりも深筋膜がターゲットになるケースが多いですが、浅筋膜も健康維持にとっては欠かせない存在です。筋膜にはさまざまな役割があるため、それぞれの特徴を理解し、適切なケアを施すことが重要といえるでしょう。

   

さらに、筋肉を包む筋膜には階層構造があり、筋内膜筋周膜筋外膜という3つの層に分かれています。筋内膜は筋線維(筋肉の細かい繊維)を包み、筋周膜は筋線維の束をまとめ、筋外膜はさらに大きな筋肉の単位を包む層です。これらの層が重なり合い、筋肉が収縮する力をしっかりと骨に伝達する仕組みを支えています。

4つの構成要素

筋膜は、コラーゲン線維やエラスチン線維、線維芽細胞、そして基質という4つの主要な要素で構成されています。それぞれが筋膜の機能を支えるために重要な役割を果たしています。

 

まず、コラーゲン線維についてです。これは、波打つ革のベルトのようにやや弾力性がある一方、限界を超えると強い抵抗性を示すのが特徴です。筋膜の張力を保ち、ある程度の伸び縮みにも耐えられる性質があるため、体の動きに柔軟性をもたせる役割を果たします。

 

次にエラスチン線維ですが、こちらはゴムのような性質を持ち、伸びたり戻ったりします。ただし、引っ張られたままだと伸びきってしまう性質があるため、適度な弾力を提供します。

 

線維芽細胞は、筋膜の中にある細胞で、コラーゲン線維を作り出します。例えば、姿勢が偏っていると、線維芽細胞がその部分に集まってコラーゲンを過剰に生成し、その結果、筋膜が硬くなりやすくなるのです。

 

そして、最も重要なのが基質です。基質は透明な部分で、水分とヒアルロン酸を豊富に含みます。ヒアルロン酸は「グリコサミノグリカン(GAG)」と呼ばれる成分の一種で、筋膜の滑りやすさを保つための潤滑液のような役割を担っています。この基質の状態が悪化すると、筋膜が硬くなり動きが制限される原因になるため、治療の際には基質の性質を整えることが目標になります。

 

筋膜の治療というと、硬い部分を引っ張ったり伸ばしたりするイメージがありますが、実はこの基質の改善が痛みや機能改善に大きく貢献します。他の組織とは異なる筋膜特有のアプローチが必要になるのです。

筋膜はどこにあるのか?

筋肉の細かい構造を見ていくと、筋膜にはいくつかの層があることがわかります。まず、筋肉の最小単位である筋線維を包む筋内膜があり、その筋線維を束ねたものをさらに包む筋周膜が存在します。これらをさらにまとめて包むのが筋外膜です。筋外膜は、さらに腱に移行し、骨膜にまで接続して、関節の運動にも影響を及ぼすことになります。

   

興味深いのは、この筋内膜と筋線維の結びつきです。筋肉が収縮すると、この結びつきによって筋内膜が引っ張られ、筋周膜や筋外膜を経て腱、骨膜にまで力が伝わります。この仕組みがあるおかげで、筋膜は関節運動の根源的な力の伝達に貢献しています。そのため、筋外膜はほぼコラーゲン線維で構成され、エラスチン線維(ゴムのような弾力性のある線維)は含まれていません。これにより、筋膜は伸びずに力を確実に伝達できるようになっているのです。

   

筋膜の役割を理解することで、体の動きにおいてどのように力が伝わり、またその力がどこに問題を引き起こすかが見えてきます。関節運動や力の伝達における筋膜の役割を知ることは、筋膜へのアプローチを深める上での基礎知識といえるでしょう。

深筋膜の役割とその重要性

筋膜の中でも特に重要視される深筋膜は、筋肉が収縮する力を他の部位へ伝える役割を持っています。

実は、深筋膜には「筋外膜」と「腱膜筋膜」という2種類があり、それぞれ異なる役割を果たしています。

筋外膜は筋肉の形を作り、力を効率的に伝達する「外枠」のような役割があり、腱膜筋膜は筋肉の収縮力を他の筋へ伝える、いわば「つなぎ」として機能します。

これにより、深筋膜は関節運動や体全体の協調した動作に寄与しています。

     

深筋膜の伝達機能は、筋線維が腱膜筋膜に接続することで実現しています。たとえば、筋肉が収縮すると、その力は腱膜筋膜を通じて隣接する筋肉に瞬時に伝わります。

この力の伝達は、神経系を介する反応よりも速く、反射的に次の筋肉が収縮するため、体が素早く反応できるメカニズムを可能にしています。

研究者のAntonio Stecco氏の研究でも、深筋膜が上肢の筋肉や腱と密接につながり、全体で協力して動く仕組みが確認されています。

     

この仕組みを知ることで、例えば親指の痛みが実は前腕や肩の筋膜のつながりに原因があるといった理解が可能になります。

つまり、局所の不調が実は他の部位の筋膜の問題から引き起こされているケースがあるのです。

このように、筋膜のつながりを理解することが、より効果的なアプローチやケアにつながります。

筋膜のつながりと治療の考え方

筋膜は体のさまざまな筋肉をつなぎ、一連の動作を可能にする重要な役割を果たしています。筋膜のつながりを理解することで、痛みや動作の制限に対する効果的なアプローチが見えてきます。

イタリアの研究者であるAntonio Stecco氏の研究によると、上肢の筋膜が連動して動くことで、遠く離れた部位への力の伝達が行われることが確認されています。

たとえば、大胸筋から上腕二頭筋、さらに二頭筋腱膜、橈側手根屈筋、そして母指球筋までが一連のつながりで構成されています。

この筋膜のつながりによって、大胸筋が収縮すると、連動して親指の筋も収縮しやすくなるのです。

   

このつながりを活用すると、たとえば親指に痛みやだるさがある患者さんに対して、直接親指ではなく前腕や肩部を治療することで効果を得られるケースもあります。

   

解剖の視点から見ると、体の筋肉や腱は非常に密接につながっており、「ここが痛いからこの部位だけを治療する」という考え方は実際には難しいのです。

例えば、長掌筋(手のひらの筋)が母指球筋(親指の根元)とつながっているため、親指の症状を改善したい場合でも長掌筋の周りを治療することで効果が出ることもあります。

   

このように、筋膜のつながりを理解することで、従来の局所的なアプローチだけでなく、全身の連動性を考慮した治療が可能になります。

痛みの原因を探る際には、問題のある箇所だけでなく、その周りの筋膜の硬さやつながりも見極めていくことが重要です。

おわりに

今回は筋膜の「解剖学的な構造」に注目し、浅筋膜と深筋膜の役割や違いについてご紹介しました。

筋膜は体を支え、動きや姿勢に大きな影響を与える重要な組織です。解剖学的な知識を深めることで、筋膜に対する理解もさらに深まり、日常生活でのケアや改善にもつながります。

 

次回は、筋膜の「生理学的な役割」について解説し、筋膜がどのように体の感覚や痛みに関与しているのかをお伝えしていきます。

筋膜の世界にさらに踏み込んでいきましょう!